役員退職慰労金とは
役員退職慰労金とは
取締役や監査役などの役員が退職した場合に、役員退職慰労金というものが存在します。
役員が、企業の発展のために尽くしてきた対価として支給するものです。
一般的な退職金の場合、企業で作成した退職金規程に基づいて支給されます。
役員退職慰労金の場合は、退職金規定の作成は必要がなく、代わり定款に役員退職慰労金の金額や、支払時期、方法について記載するか、株主総会の決議によって決定する必要があります。
役員退職慰労金の算出方法
退職慰労金には金額の制限はありませんが、退職慰労金を損金に算入できる金額が限られるので、注意が必要です。
功績倍率法という計算方法で、適正な金額を算出することができます。
この算出方法は、直近に支給されていた給与をもとに、勤務年数や、功績などに応じて一定の倍率を乗ずる算出方法で以下の通りです。
役員退職慰労金の適正額=直近の月額報酬×勤続年数×功績倍率
〈例〉
直近の月額報酬100万円、役員勤続年数20年、功績倍率1.5倍の場合
100万円 × 20年 × 2.0倍率 = 4,000万円 となり、役員退職慰労金の適正金額は4,000万円となります。
算出する上で注意点は、功績倍率が適正かどうかが重要です。最高で3.0倍ともいわれています。
過大ではないことが条件になりますので注意しましょう。
役員退職慰労金のメリット・デメリット
■ 法人側のメリット
役員退職慰労金については法人税等の節税効果があります。
功績倍率法によって算出された役員退職慰労金は、原則として高額すぎなければ損金として算入が認められます。
損金算入できるということは、所得を圧縮することができ、利益が出ている会社にとっては節税に繋がります。
また、役員退職慰労金は社会保険料の適用が対象外のため、法人側が負担する必要がありません。
■ 役員側のメリット
役員退職慰労金の支給を受ける役員については、その受給額に所得税が課されます。
役員退職慰労金は退職所得に該当するため計算式は、
課税退職所得 =(役員退職慰労金支給額 - 退職所得控除)× 2分の1
所得税 = 課税退職所得 × 所得税率-控除額
役員退職慰労金支給額から退職所得控除額を控除した2分の1(半分)に課税されるため、税負担を軽減されます。
さらに、退職所得は分離課税のため、他の所得と合算されず退職所得だけに対して税率が適用されるため、より低い税率で課税されます。
■ 役員退職慰労金のデメリット
法人側にとってはデメリットがあります。
・支給金額が多額となり、会社にとって負担が大きくなります。特に経営や財務状況が厳しい企業ほど、財政状態の悪化に繋がるという危険性があるという点です。
・役員退職慰労金は取締役会決議を経て、株主総会の承認を得なければなりません。決議が順調にすすめば良いですが、株主総会で否決されうまくいかないケースもあるため、事前に株主への説得や根回しが必要な場合があります。
もし、株主総会で否決された場合は、会社法に則った退職慰労金としては認められず、損金算入することができなくなってしまいます。
以上の点に注意し、役員退職慰労金を決定しましょう。
まとめ
役員退職慰労金に関する手続きは株主総会での決議ですが、役員退職慰労金支給について事前に内規しておけば安心です。税務調査が入った場合でも、基準にしたがって支払ったという証拠になります。
役員退職慰労金が高額過ぎると判断されると、税金面で不利な場合もありますので支給金額には注意が必要です。